役員退職金の「功労金(役員退職金×30%)」は損金算入を否認されるケースがある
皆さんこんにちは「保険アドバイザー 和田」です。
今日は『役員退職金の「功労金(役員退職金×30%)」は損金算入を否認されるケースがある』についてお話したいと思います。
私が保険業界に身を置き始めた20年以上前の頃は「役員退職金」についてはこんなふうに理解されていました。
・役員退職金=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率
・功労金=役員退職金×30%
この「役員退職金」と「功労金」を足した金額が、損金として支給可能な金額の目安として、パンフレット類などにも書いてあったと記憶しています。
そして、その計算して出た金額を元に
「社長、役員退職金は役員報酬と比べて非常に税金も少ないですから、これを使わない手はありません。退職金として損金で認められる分を、損金の保険で簿外に積んでおきましょう」
ってな感じです。
確かに「役員退職金」は非常に税金が優遇されていて、以下のとおりです。
・退職所得=(退職金—退職所得控除*)×1/2
*退職所得控除額の計算方法
・勤続年数20年以下の時:40万円×勤続年数
・勤続年数20年超の時 :800万円+70万円×(勤続年数—20年)
(勤務年数に1年未満の端数があるときは、1日でも1年として計算)
具体的な例で見てみます。
【勤続年数30年 最終報酬月額250万円の代表取締役 功績倍率3.0】
・役員退職金=2億2,500万円(250×30×3.0)
・功労金=6,750万円(役員退職金×30%)
・役員退職金総額=2億9,250万円
・退職所得=1億3,875万円{(2億9,250ー1,500万円)×1/2}
・退職所得金に対する所得税=5,764万円(1億3,875万×45%ー4,796,000)
・手取額=2億3,486万円(2億9,250万円ー5,764万円)
・所得税率=19.7%(5,764万円÷2億9,250万円)
ということで、役員報酬でもらっていれば45%の税率をまともに食らってしまうわけですから、役員退職金がいかに優遇されているかがわかります。
で、今日の問題はこの「功労金」です。
これは、特別に会社への貢献度が高かった場合に、規程で定める事で「功労加算金」として役員退職金の金額に一定の倍率を掛けた金額を支給する事が可能だと言われていますがこの”特別に”がポイントで、平成25年の東京地裁の判例にこのようなものがあります。
【東京地裁(平成25年3月22日)】
同業類似法人の抽出が合理的に行われる限り、役員退職給与の適正額を算定するに当たり、これを別途考慮して功労加算する必要ないというべきであって、同業類似法人の抽出が合理的に行われてもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたといい難いほどの極めて特殊な事情があると認められる場合に限り、これを別途考慮すれば足りるというべきである。
つまり、極めて特殊な事情がないからダメ、、、って否認されたってことですね。
そもそも、役員退職金と功労金を分けただけの話で、これは功績倍率の掛算のところの数字が変わったのと同じ意味合いです。
保険セールスのよく使う例では功績倍率は役員退職金の30%とすることが多いのですが、これは功績倍率3.9にしたのと同じってことです。
これを物語る意味で、大分地裁でこのような判例があります。
【大分地方裁判所(平成21年2月26日)(一部編集)】
功績倍率を基に計算された範囲内での役員退職給与であれば相当であると認められるものの、これを超えた部分については名目の如何にかかわらず、過大な役員退職給与として損金算入を認めることはできないので、退職慰労金とは別に支給しても合理的であるとの原告の主張は採用できない。
この功績倍率については、法律で決まっている訳では無いので会社が独自に役員退職金規程で決めることが出来ますが、おおむね一般的には
・社長 2.5〜3.0倍
・専務 2.0〜2.6倍
・常務 1.8〜2.3倍
・取締役1.0〜2.0倍
程度となっています。
中には、功績倍率7.5倍が認められた裁判事例(東京高判昭和52年9月26日(税資95号597頁))がある一方で、国税不服審判所の裁決で1.9倍が妥当とされた例も有ります。一応の目安としては上記で示したものになりますが、あくまでも目安に過ぎません。
これらのようなことから考えると、安易に「功労金」を含めて退職金の計画をするのは危険ですし、これを使った保険のセールストークも改めた方が良いですね。
ただし、、、役員退職金が非常に税制面で優遇されているのは間違えありません。そのツールとして「節税の保険」はひとつの選択肢としては非常に有効な手段です。最近各社で販売されている全損の保険は、一部の会社で販売停止になったり、利率を下げる措置などが取られてしまいますので、利益の出ている企業はこの機会を逃さず、経営者の皆さんはこれまでさんざん高い税金を納めて来られたわけですから、この税制メリットをしっかりと教授できるよう準備して下さい。
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